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文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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読書メモ 32

平成31年1月1日から令和2年3月31日の実況です。項目ごとに、日付を遡る形で記載しています。
ひとつ前の 平成30年7月1日~12月31日 の実況はこちら。
ひとつ後の 令和2年4月1日~  の実況はこちら。



読 書:
<図書館などから借りて読了>

令020330 危機と人類 [下]    (日本経済新聞出版社、令和元年刊)   Jared Diamond 著、小川敏子・川上純子 訳
(著者自身、中国と朝鮮について自分が詳しく知らないことを認めながら、日本の大東亜戦争関連の歴史認識については中国・韓国のプロパガンダの言いなりになっている。日本人は過去を見据えていないと繰り返し批判し、南京「大虐殺」論者であることをひけらかす。ときの碩学であるはずの JD 氏にしてこの体たらく。いったい JD 氏がつきあっている日本人とは、どんな人たちなのだろう。|米国の極端な二極化(政治・経済の両面で)および米国がカナダのような良き手本をすぐ近くに持ちながらそれに学ぶ必要を全く意識していないことを繰り返し指摘する。途上国の国民が先進国なみにエネルギーを使いだしたら、それは世界人口が約800億人になるのと同じ、という論理だてには説得力を感じた。)

令020322 はじめてでも読みこなせる英文契約書    (明日香出版社、平成30年刊)   本郷貴裕 著
(まさに自分も商社マン稼業で習い覚えたことが、後輩にストンと伝わるような形でまとめられている。契約書入門の鑑。海外営業担当者必読だ。|句読点の使い方にも光を当ててほしい。本書にセミコロンの用法の誤りあり。)

令020320 英語の歴史から考える英文法の「なぜ」    (大修館書店、平成31年刊)   朝尾幸次郎 著
(8世紀末にデーン人がブリテン島の北半分を奪い、古英語に似た古ノルド語が入り込み、おなじゲルマン系の両言語が混じってピジン化し、語尾の屈折が急速に消滅した。人称代名詞のなかで、なんと they だけは古ノルド語から採り入れられたと。1066年に英国を征服したノルマン人ももとはデーン人だったが、こちらはノルマンディーの地を与えられてのちフランス化し、英国へは支配者としてフランス語を持ち込んだのだと。|英国の言語変化を周辺言語の変化と共時的に眺める記述になっていれば最高だが、咀嚼できる読者があまりに少数か…。|62頁に半ページにわたりエスペラントの動詞変化形に言及あり。)

令020317 エネルギーの愉快な発明史    (河出書房新社、令和元年刊)   Cedric Carles, Thomas Ortiz, Eric Dussert et al. 著、岩澤雅利 訳
(エネルギー界のイグノーベル賞シリーズ、みたいなことかと思ったら、至極真摯に歴史の別の可能性を考えさせる作だった。まさに原題のとおり Retrofutur: Une contre-histoire des innovations energetiques. 日本語版のために Thomas Ortiz 氏が書いてくれた1887年の屋井先蔵の世界初の乾電池の発明、に驚く。もっとも、特許は翌1888年にドイツ人のカール・ガスナーが取ってしまった。日清戦争で日本軍が極寒の満洲で戦えたのは屋井先蔵の乾電池のおかげだったというから、すごい。)

令020314 訴訟王エジソンの標的    (ハヤカワ文庫、令和元年刊)   Graham Moore 著、唐木田みゆき訳
(原題 The Last Days of Night をみごとにすり替えた日本語版タイトル。エディソン、ウェスティングハウス、テスラ、J.P. モルガンと、歴史の著名人らがうごめく。稀代の悪玉エディソンが中和されていく筋立ては、やや拍子抜けだが納得感あり。電力関係者、みな読むべし。)

令二0226 やりたいことを全部やる!時間術    (日経ビジネス人文庫、平成30年刊)   臼井由妃 著
(時間の密度を上げるために、捨てるものはバッサリ捨てる。ビジネスを開花させる気配りノウハウも。)

令二0224 古典講読シリーズ 芭蕉七部集    (岩波セミナーブックス、平成4年刊)   上野洋三 著
(この内容についていけるのも、これまで現代連句の本を数冊読んできたからだ。いきなりでは、ついていけまい。連歌・連句が、森羅万象の語彙を分類して句数去嫌(くかず・さりきらい)を定めていたとはビックリ。かつ、俳諧が連歌に対する新味を出すべく、俳言(はいごん)の使用を基本としたというのも、納得。奥の深さを知った。)

令二0219 英会話 その勉強ではもったいない!    (青春新書 Intelligence 令和元年刊)   David Thayne 著
(英語/米語のリストや早口言葉集など、保存版的ページがちょくちょくある良著。)

令二0219 中国くいしんぼう辞典    (みすず書房、令和元年刊)   崔岱遠 著、川 浩二 訳
(中国語原文の情緒を髣髴とさせるみごとな訳文。中国料理の繊細さと多様さを再認識した。360ページほどの本文に対して、ぼくが知る中国料理はまだ1ページほどと言うべき。)

令二0214 完本(かんぽん) 文語文    (文藝春秋、平成12年刊)   山本夏彦 著
(夏彦さんの文章をちゃんと読んだのはほぼ初めて(これまでは「鰐の話」の訳書のみ)。漢文(の書き下し文体)や流麗平安和文がたたえていた文章美への哀惜。美しき語彙と変化に富む語尾が、口語文の洪水で失われてしまったことを哀しむ。)

令二0211 危機と人類 [上]    (日本経済新聞出版社、令和元年刊)   Jared Diamond 著、小川敏子・川上純子 訳
(フィンランド、チリ、インドネシアそして明治維新が取り上げられるが、黒船から明治維新を経て大東亜戦争の破局に至る日本史の叙述と評価は的確で、そこから見て他の3国についても信頼できる記述がなされているであろうと推測できる。それら3国の危機の歴史は、ぼくのほとんど知らないことばかりだった。|冒頭の1章が著者の個人史に充てられていて、それを読んで著者がじつは多言語使用を職業にしようと考えた時期もあったことを知り、諸著作に頻繁に見られる言語への深い関心ぶりが納得できた。|≪頑固さや融通の利かなさは、過去の虐待やトラウマから生じたり、子供の試行錯誤や家の決まりごと破りを許さないしつけの結果の場合もある。柔軟性は、自分で自由に選択することを許されて育つと伸びる。≫ あの父親のことを想起して、ため息。)

令二0207 父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話    (ダイヤモンド社、平成31年刊)   Yanis Varoufakis 著、関 美和 訳
(冒頭2章は Jared Diamond 著作の既視感があるが、おカネの誕生から価格や市場社会の概念を捕虜収容所でのできごとなどに基づく思考実験で腑分けしていく後半はスリリング。さまざまなニッチでの民主化がなぜ必要なのか、説得力あり。締めに引用された詩にほろりとする:≪私たちは探検をやめることはない/そしてすべての探検の終わりに/出発した場所にたどりつく/そのときはじめてその場所を知る≫)

令二0203 NHK CD Book 実践ビジネス英語 ニューヨークシリーズ ベストセレクション    (NHK出版、平成28年刊)   杉田 敏(さとし)
(20篇のヴィニェット+CD2枚。ビジネスパースンどうしの雑談。ビジネス英語と言いつつ、じつは現代アメリカ事情の紹介。じつによくできている。)

令二0131 対話力アップ ビジネス英語フレーズ800   (NHK出版、平成26年刊)   杉田 敏(さとし)
(後半の名詞句はほとんどわかるけど、前半の動詞句はけっこう知らないのもあって、2周しなきゃいけないな。注の入れ方が上手。)

令二0122 グローバライズ   (河出書房新社、平成28年刊)   木下古栗(ふるくり)
(谷崎潤一郎さんに読んでいただけたら、たぶん驚喜する。実験掌篇などという甘っちょろい言い方は通用しない無謀を超えた怒濤の 12篇。フェイク漢文のお経もどきエロパロディーの「道」。窮極のスカトろ男の「専門性」。明らかな虚構を読ませる筆力がみごと。)

令二0117 昨日までの世界 [下] 文明の源流と人類の未来    (日本経済新聞出版社、平成25年刊、原著 平成24年刊)   Jared Diamond 著、倉骨 彰 訳
(多言語主義を力強く支持してくれていて、エスペラント者も必読のはず。宗教の担う役割について筋道立てて論じているのもみごと。|ちなみに、目下ぼくは、聖マリアの処女懐妊のことを、彼女が愛多き美しきシングルマザーだったと理解しております。シングルマザーの母をかばいたいから、イエズスは罪深さに対してやさしかったのだし、マグダラのマリアに母マリアの姿を二重写しにして恋したのでしょう。この解釈のほうが、ぼくとしてはキリスト教に近づける気がする。聖ヨゼフはシングルマザーのマリアを庇護する中年男性。仮にもし聖書に言うような処女懐妊だったとしたら、イエズスの幼年期について記録がないのが不自然でしょう。)

令二0117 あの人に会いに 穂村弘対談集    (毎日新聞出版、平成31年刊)   穂村 弘 対談
(クリエイティブである瞬間を、それぞれのひとが自分のことばで表現する。前半の谷川俊太郎、宇野亞喜良、横尾忠則、荒木経惟の大御所と、後半の萩尾望都(もと)、高野文子、吉田戦車の3名の漫画家と、映像作家・佐藤雅彦、ロックミュージシャン・甲本ヒロト。後半のこの5名の皆さんの作品に全く触れたことがなくて、それってとても残念なことだよねと思える。どこから始めようかな。)

令二0109 昨日までの世界 [上] 文明の源流と人類の未来    (日本経済新聞出版社、平成25年刊、原著 平成24年刊)   Jared Diamond 著、倉骨 彰 訳
(「文化がちがう」というのが、ほんとのところどういう意味なのか、紛争対処や育児の切り口で示してくれる。国家に暴力を集約することで紛争による死亡率が激減したのは福だが、紛争解決が長期化し そっけなくなる弊害も。)

令二0108 連句のすすめ    (桐原書店、平成3年刊)   暉峻(てるおか)康隆・宇咲(うさき)冬男 著
(理想の入門書。さいごの付録、高校生が加わった半歌仙2巻おそるべし。本篇は歌仙5巻、半歌仙1巻を巻く。)

令元1229 濹東綺譚(きだん)    (ワイド版岩波文庫、平成6年刊)   永井荷風 作
(今ごろ感はあるが、本作を読む適齢にようやく達したところのように思える。青少年が読む本ではなかろう。|もっとズブズブに濡れ落ちのかと思いきや、さらりとした放浪記。傍観半分に感じられるのは、思いの先が昭和11年の現在ではなく一世代昔の明治末期にあるからだ。)

令元1226 日本文学100年の名作 第7巻 公然の秘密    (新潮文庫、平成27年刊)   池内紀・川本三郎・松田哲夫 編
(知らなかった新潮文庫創刊100年記念企画の7冊から。田中小実昌「ポロポロ」を読もうと借りる。筒井康隆「五郎八航空」、井上ひさし「唐来参和(さんな)」、色川武大「善人ハム」。安部公房「公然の秘密」は2度読ませる文章の造形美だ。)

令元1215 江戸時代の「不都合すぎる真実」 日本を三流にした徳川の過ち   (PHP文庫、平成30年刊)   八幡和朗(かずお)
(時代風潮の徳川礼讃に蝕まれていた自分であったが、冷静に考えればなるほど徳川日本とは「現代北朝鮮」である。一読して、憑き物が落ちた気がする。|徳川慶喜のことを、事前の説明・相談なしに予測不能な行動をする、統治者として欠陥のある人物と喝破。西郷隆盛についても、よくわからない人物と率直に評してあってホッとする。ぼくは西郷嫌いだからネ。坂本龍馬の死も、会津藩の手になるものであり何の謎も無しと。)

令元1208 刺青・秘密   (新潮文庫、平成23年 改版)   谷崎潤一郎 著
(刺青、少年、幇間、秘密、異端者の悲しみ、二人の稚児、母を恋うる記、の7篇。息詰まる谷崎ワールドにもっと早く開眼したかった。学校教科書に載せられぬ作品ばかりなのが、また良い。)

令元1208 英会話 その単語じゃ人は動いてくれません   (青春新書、平成27年刊)   David Thayne 著
(現代英語のきらきらした単語にフォーカス。|A: "Let me pay for dinner tonight." B: "No, please. Let me have the honor." このBが「お気持ちだけいただきます」だって。|change を嫌がるネイティブは大勢いるが、revamp にはさほど抵抗を感じない。|It was a dazzling performane. うん、ゴージャスな感じだ。|I respect you more than you know. | It's one of my passions. わたしの生き甲斐のひとつ。|George has a can-do attitute. やる気がある。)

令元1203 英語 足を引っ張る9つの習慣   (青春新書、平成24年刊)   David Thayne 著
(pass on が「天国ゆき」だというから辞書をひいたら「次代に託する→死ぬの婉曲語」。put up「泊まらせる」は「宅に上げる」ということだろう。be broke で be poor. チャレンジするは I challenged myself to get up early every day. みたいなのも使える。|Do you mean what you say? 本気ですか。|何かを断るときには、ぶっきらぼうなことを言わずに、含みを持たせよというのも、いいアドバイス。Maybe it's best to look ahead to the next opportunity. とか Let's not say yes if we can't find a win-win situation.)

令元1127 春琴抄   (新潮文庫、平成24年 改版)   谷崎潤一郎 著
(谷崎の語り口が春琴・佐助の世界をリアルに見せる。三浦友和演じる佐助が眼を針でついて痛みにのたうつシーンを映画の予告篇で観た記憶があるが、原作では無痛のうちに視界が白濁する。春琴の嗜虐性には、『春琴抄』発表の2年前に結婚し発表年に別居した古川丁未子の姿が反映されているのではないかと訝る。)

令元1107 江戸幕末滞在記     (新人物往来社、平成元年刊)   Edouard Suenson 著、長島要一 訳
(1866~67年の横浜・大坂を活写する。著者は当時24~25歳。みずみずしい筆致はフェアで、好感がもてる。)

令元1106 超高速PDCA英語術    (日本経済新聞出版社、平成31年刊)   三木雄信(たけのぶ)
(著者自身が経営する英会話学校の宣伝本になってしまっているのが残念。「発音矯正と作文は捨てる」という、ぼくの教授法の対極のようなことをミスリーディング発言しているが、実際はシャドウイングと英語基本文暗記に重点を置く(=素人でも教えられるように!)ことにより、しっかり発音・作文能力にも目配りしている。まぁ、あたりまえだ。発音がヘタで作文ができなかったら、英語力はボロボロなのだから。|言語学者マイケル・H・ロング氏の「インタラクション仮説」を紹介している。「第2言語は対象言語を用いた face to face の相互交流によって促進される」というもの。≪第2言語を使って誰かと会話していると、自分が言ったことが相手に伝わらなかったり、理解されなかったりすることがあります。すると、お互いが他の表現に言い換えたり、もっとゆっくり話したりして、会話の意味を理解しようと努力します。これが「意味の交渉」であり、こうしたやりとりをしなければいけない環境に置かれることでコミュニケーションスキルが大きく伸びるというのが「インタラクション仮説」の主張です。双方向で会話しながら、相手の反応や態度に合わせて自分が持っている単語や表現を使いながら意思の疎通を図ろうとする。これはまさに「英語運用力」です。≫ (118頁)。≪「伝わらないときや、わからないときはどうするか」という戦略を持っておけば、手持ちのインプットだけで勝負できるということです。そのためには、誰かとコミュニケーションして、「自分の言ったことが伝わらない」という経験をすることが欠かせません。ですから学習計画には「双方向のアウトプット」を必ず組み込んでください。≫(119頁)。このあたりは、対面個人レッスン重視のわたしのポリシーにも沿うものだ。)

令元1104 越前敏弥の日本人なら必ず悪訳する英文    (ディスカヴァー携書、平成23年刊)   越前敏弥 著
(プロの翻訳家というのはナマジっかなものじゃないなと、はじめて実感させられた。「翻訳とは、原著者が日本語を知っていたらそう書くにちがいないような日本語にすること」とは至言。)

令元1104 新釈 四谷怪談    (集英社新書、平成20年刊)   小林恭二 著
(お岩さまの四谷怪談を鶴屋南北が生み出すには、すでに信仰をあつめていた於岩稲荷や、おそるべき累(かさね)伝説をはじめとする世の中の素材を組み込んでいて、まさにシェークスピアの作品形成プロセスを思わせる。南北の賤民としての出自を、逆転発想の原動力ととらえる論考もよい。それにしても、江戸時代に御家人がかつかつの生活の身だったとは。)

令元1023 ボダ子    (新潮社、平成31年刊)   赤松利市(りいち)
(無残絵を文章化したような。薄幸の女への愛だが展開は激しい。著者は昭和31年、香川県生まれ。)

令元1022 越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編    (ディスカヴァー携書、平成26年刊)   越前敏弥 著
(英語の上級文法を、往年の『頭の体操』ふうに実例クイズ集に仕立てて読ませる本。ぼくもいくつか罠にはまった。)

令元1022 ずるいえいご   (日本経済新聞出版社、平成26年刊)   青木ゆか 著、ほしのゆみ 画
(「知識の量ではなく、自分で紡ぎ出す力を養くべき」(42頁)。「すてるえいご力」の 4つの柱は、「8割すてる」「大人語をすてる」「直訳をすてる」「抽象語をすてる」(77頁)。マンガ仕立てだが、著者の言を裏づける実例が豊富で、説得力あり。|米国でウェイトレスが注文をとるとき Supersalad. というので それが欲しいと Yes, please! と言ったら、じつは Soup or salad? と聞かれていた、というのが笑える(78頁)。)

令元1019 なんでも英語で言えちゃう本   (日本経済新聞出版社、平成28年刊)   青木ゆか 著
(てっきりなにかの英語表現集かと思ったら、そうではなくて、「言い換える力」にフォーカスしている。≪「微妙に自信がない単語」を使うのを避けながら、言いたいことが伝わるように言い換える、その「言い換える力」を身につければいいのです≫(31頁)。「これまでの英語勉強法の常識を覆す、まったく新しい勉強方法」として著者が提案するのが「魔法のボックス」。大きく田の字を書いて、中央に自分が言いたいと思う日本語を書き、その四方のボックスに英語表現を書いてみる。
≪この、魔法のボックス。日本人の英語勉強法に革命を起こす!と私は確信しています。理由は3つ。
【魔法のボックスのすごいところ】
・人間の「穴があったら埋めたくなる」性質を利用(やめられない!)
・クリエイティブになる
・正解がない、を体現している!≫
英語の壁を突破するためのスタンスを上手に伝授する快著。)


令元1002 新版私説東京繁昌記     (筑摩書房、平成4年刊)   小林信彦 著、荒木経惟 撮
(本篇は昭58~59に『海』誌連載後、昭59に刊行。その8年後のさらなる「町殺し」を慨嘆する付録つきが新版。いまの欧米一流都市なみに見える東京ができる前の、いま思えば一地方都市なみの、安易に言うなら猥雑な東京を記録する。小林信彦さんの文章を読むのは初めてかもしれない。このジャンルは今では無料ブログに移行してしまい、カネにならないのではないか。それとも有料メルマガで生きる、のかな。)

令元0925 東西味くらべ   (角川春樹事務所 ランティエ叢書、平成10年刊)   谷崎潤一郎 著
(アンソロジー。握り寿司への薀蓄が極まるが、発酵食品にはさほどの興を覚えぬお人のよう。潤一郎33歳の1919年、『大阪朝日』掲載の「美食倶楽部」が口腔を淫猥に描きまわす。)

令元0901 英語通ならこれだけは知っておきたい72の表現   (朝日出版社、平成28年刊)   浅田浩志 著
(現代英語のピリッとした言い回しを、表現ごとにいくつもの用例を添えながら解説し各2ページの読み物に仕立てた好著。著者は言語学習の本質をよく心得ている。)  

令元0817 世界史の新常識    (文春新書、平成31年刊)   季刊『文藝春秋SPECIAL』から編集部が編集
(渡辺惣樹(そうき)「共和党対民主党 日本人が知らないアメリカ史」は必読。民主党はもともと南部を地盤とする人種差別を党是とする政党だったが、南部の白人の経済レベルが上がって黒人搾取構造の必要が低下し支持が下がると、がぜん大転換してリベラル派取り込みに打って出た。どこまで行ってもゆがんだ政党だ。|加藤隆「<キリスト教>はイエスの死後につくられた」も納得だ。古代ユダヤ教では「人が何をしても神を都合よく動かすことはできず、神が一方的に動くしかない」とされ、イエスもその考えだったが、ペトロが集団組織原理を導入すべく「人間の側の活動が神を動かしうる」ことにしてしまった。以来、この宗教もご都合主義だらけだ。)

令元0724 英語の処方箋 「日本人英語」を変える100のコツ    (ちくま新書、令和元年刊)   James M. Vardaman 著、安藤文人 訳
(多様なポイントをコンパクトに網羅。「類義語」には「単語の繰り返しは避ける」と題して2ページ充てている。board the train, get on the train あるいは repetitiously と repeatedly のようなペア。| TOEIC に出てくる server が waiter/waitress の PC 代替語であること、はじめて知ってなるほど。)

令元0715 USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門    (角川書店、平成28年刊)   森岡 毅 著
(名著。どうも著者は三菱商事にも内定していたようで、それを蹴って P&G に行ったことを正しい選択だったと言いつつも、一抹の未練を漂わせる。|カレーと すき焼の落としどころで「カレーすき焼」を作っても消費者最適ではない。しかし現実には役員に上がるのは「カレーかすき焼かを選んでほしい」ではなく「カレーすき焼をやるかやらぬか選んでほしい」になってしまっている。|マーケティングとは「売る仕事」ではなく「売れるようにする仕事」。ネット転売屋との戦いの修羅場がすごい。そして、設備投資をせずにゾンビー役者らの動員でもって日本人にとってのハロウィーンを変えた2011年は、なんと偉大な日本文化史の転換点だろう。|恩返しのかわりに、若い世代へ「恩回し」。|会社は社員の「強み」に対して給料を払っているのに、日本人の多くはあまりにも弱点克服に比重を置きすぎた「ドM気質」。多くの人にとって弱点克服が難しいのは、意識変化と行動変化(能力変化)のタイムラグに耐えられないから。その人の強みは、必ず「好きなこと」の中に埋まっている。)

令元0713 GAFA 四騎士が創り変えた世界    (東洋経済新報社、平成30年刊)   Scott Galloway 著、渡会圭子 訳
(GAFA は限界線を知らぬ生命体のように見えて気味が悪いが、マーケティングの窮極の成功系だ。|それにしても、巻末ちかくに言う「上司を助けても感謝はされないが、部下を助けると感謝される」は至言。「上」とは、しょせんそういうものだな。)

令元0629 共通語の世界史 ヨーロッパ諸言語をめぐる地政学    (白水社、平成30年刊、原著 平成4年刊)   Claude Hage`ge 著、粕谷啓介・佐野直子 訳
(さまざまな言語を携えつつ流浪したユダヤ人の歴史に胸を打たれる。ロシア語の隠然たる偉大さを再認識した。)

令元0616 堕落論・日本文化私観 他二十二篇    (岩波文庫、平成20年刊)   坂口安吾 著
令元0614 坂口安吾全集04    (筑摩書房、平成10年刊)   坂口安吾 著
(「堕落論」「続堕落論」「白痴」「日本文化私観」の4篇を読んだ。逆説から真理にいたる道筋が確かだ。危険だが必読と言うべき。)

令元0610 下町ロケット ヤタガラス    (小学館、平成30年刊)   池井戸 潤 著
(池井戸作品、熱い! とりつかれたような筆致が綿密な構想力に裏打ちされているのが、さすが。ちなみに、テレビドラマ以上に的場俊一がとことんイヤラシいね。)

令元0610 プログラミング教育はいらない GAFAで求められる力とは?    (光文社新書、平成31年刊)   岡嶋裕史(ゆうし)
(プログラミング教育が、青少年の良質な「試行錯誤」の場たりうることは分ったが、実体としてはそもそも教育内容もメソッドも未整備で、まさに生体実験開始!だ。霞ヶ関のデッカチ頭と現場との連携のなさが際立つ。|≪アイデアと言うと、得てして突飛なものが求められるように感じられがちである。しかし、誰も考えもしなかったような突飛なアイデアは、やはり誰にも求められていないことが多い。ビジネスとして成功するのは「みんな欲しいと思っていたけど、実現は不可能だと考えられていた」程度のアイデアであることが多い。≫ ≪プログラミングは決して時間単価の高い仕事ではなく、近年ではプログラミングのアウトソーシングやオフショアリングも進んでいる。社会インフラやプロダクト、サービスの立案者・企画者が必ずしも自らプログラミングする必要はない。しかし、プログラマーと直接対話できる水準の情報技術を有しておくことは、高い品質のインフラやサービスを生み出すための重要な要素である。≫|COBOL開発者のグレース・ホッパー曰く「いい考えは実行すべき。許可をもらうよりも、謝るほうが簡単なのだから」。)

令元0602 チェコ語の隙間 東欧のいろんなことばの話    (現代書館、平成27年刊)   黒田龍之助 著
(ポーランド語とチェコ語がわかると、この本もすいすい読めた。黒田さんはイタリア語は得意だがドイツ語はそうでもないらしい。)

令元0530 チェコ語の基本 入門から中級の入り口まで     (三修社、平成24年刊)   金指久美子 著
(全32課中、24課までやったところで、いったん返却だ。チェコ語をやったおかげで、ポーランド語も裏口から攻めた感じがする。)

令元0530 あなたに伝えたい政治の話     (文春新書、平成30年刊)   三浦瑠璃 著
(≪難しい判断を現場に押し付けることは、法治国家では絶対にやってはいけないことです。≫ ≪今回の合意によって、日本社会には、今後韓国(人)は慰安婦問題を持ち出さないという期待が生じているかもしれませんが、その期待はほぼ確実に裏切られる運命にあります。韓国国内に存在する強い反日世論は変わりませんから、反日運動は続きますし、日の丸が焼かれることも続くのです。≫ ≪韓国政府も、慰安婦問題で日本政府を「批判」することはしないかもしれませんが、慰安婦問題を「記憶」し「顕彰」するための活動は当然継続するはずです。≫)

令元0520 チェコ語のしくみ     (白水社、平成19年刊)   金指(かなざし)久美子 著
(この本のみでは分かりにくかろうが、いまのぼくには最適だった。アクセントが第1音節にあることや、se や過去形人称助辞の jsem などが文の2番目を占めようとすることなど、『チェコ語の基礎』に書かれてないことが本書に書いてあり、助かった。やはり言語学習の初期には何冊か読むことだ!)

令元0518 プログラミング教育ってなに? 親が知りたい45のギモン     (ジャムハウス、平成30年刊)   石戸奈々子 著
(役人が書いた答辯書みたいな本。やはりプログラミング教育は、生体実験じゃないかな。学校で学ぶより、みんな自分で学んでるだろ。性教育みたいなものだな。)

令元0517 傍流の記者    (新潮社、平成30年刊)   本城雅人 著
(新聞社の人間群像がリアルに描かれる。記者志望前にこの本との出会いがあったならな。)

令元0507 微分・積分がかんたんにマスターできる本     (明日香出版社、平成20年刊)   間地秀三(まじ・しゅうぞう)
(「微分は接線の傾きを示す→「傾きゼロ地点」が持つ意味合いを利用して問題解決へ」「積分で面積・体積が求められる」。あぁ、なるほどだ。高卒以来、たびたび悪夢に出てきた微積が、こわくなくなった。遅かりしだが、コンプレックスがひとつ消えた。)

令元0505 プログラミング教育が変える子どもの未来     (翔泳社、平成30年刊)   松村太郎ほか 著
(英国で2014年に Computing という科目が5~14歳の必修科目になったのを真似ているわけだが、つまりディープラーニング以前の状況を前提にした教育イニシアティブなわけだ。すでにして教育の原点が古いというべき。本書中のインタビューで岡嶋裕史氏(中央大准教授)がこんなことを言っているが、それならプログラミングではなく本丸の経営学を教えるべきところだ:≪プログラミングは幅の広い言葉ですが、コードを書ける能力といいう意味では、そんなにたくさんの人に必要な能力ではありません。しかし、プログラミングで必要になるチームマネジメントやコミュニケ―ション、リーダーシップ、見通し、PDCAサイクル、論理的思考力は現代を生き抜く強力な力になるでしょう。各々の能力にはそれぞれの育て方がありますが、すべてを総合する PBL (課題解決型学習)的な手法としてプログラミング教育を用い、これらを育んでいくのは、とてもよいやり方だと思います。≫ よく言うよ、まったく。)

310430 韓国語の発音と抑揚トレーニング     (アルク/HANA、平成21年刊)   長渡陽一 著
(朝鮮語が平音と激音を抑揚アクセントで区別するというのは、朝鮮語の発音習得のキモ。ぼくはだいぶ前の NHK の朝鮮語講座に抑揚特集があって初めて知ったが、それとは別にこんな名著があったとは。はっきり言って、抑揚アクセントに触れない学習書は欠陥品だと思う。それくらいだいじ。)

310429 韓国語形容詞強化ハンドブック     (白水社、平成30年刊)   今井久美雄 著
(一周半した。朝鮮語の小説を読みつつ何周もすべき名著。)

310427 中国と日本 二つの祖国を生きて     (集広舎、平成30年刊)   小泉秋江 著
(昭和28年生まれの有能でひたむきな女性のあまりにも壮絶な個人史。大飢餓と毛乱をよくも生き延びられたものだが、その無理が日本に移住してから体に噴き出ているのだろう。|中国から日本への最後の引揚船は昭和31年だったという。|ギンズブルク『明るい夜 暗い昼』、寺島儀蔵『長い旅の記録』、斎藤多喜夫『歴史主義とマルクス主義 ― 歴史と神・人・自然』、福地いま『私は中国の地主だった ― 土地改革の体験』、長谷川暁子『二つの祖国の狭間に生きる ― 長谷川テルの遺児暁子の半生』、韓瑞穂『異境 ― 私が生き抜いた中国』、平林美鶴『北京の嵐に生きる』)

310425 転んだついでに休んでいこう 韓国語おもしろ表現    (白水社、平成25年刊)   村山俊夫 著
(朝鮮語らしい表現のかずかず。数年後に読めば、さらに腑におちるところも多そう。)

310423 60歳の壁 定年制を打ち破れ    (朝日新書、平成30年刊)   植田 統(おさむ)
(自分として挑戦心は十分保っているつもりでいたが、知らぬ間に退いている部分があることに気づかされた。米国紙の時事コラムを読む習慣を取り戻すところをひとつの目標にしなければ。|ひととのつながりがあるかどうか、社会に必要とされていると感じているかどうかが、幸福感を左右する。おカネは、あくまでその結果。|前頭葉の老化は、日々少しでも想定外のできごとが起こるようにすることで防止できる。イベントに参加したり、ひとと会って話すことで、前頭葉に刺激を与え続ける。|60歳後に自分の得意分野で独立してターゲットにできるのは、個人や零細企業のマーケット。|煮詰まらないようにするには、仕事の進め方をマルチタスク化すること。つまり、いくつかの仕事を細切れにやること。)

310422 日航123便墜落 遺物は真相を語る    (河出書房新社、平成30年刊)   青山透子 著
310419 日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る    (河出書房新社、平成29年刊)   青山透子 著
310415 日航123便墜落 疑惑のはじまり 天空の星たちへ    (河出書房新社、平成30年刊)   青山透子 著
(遅ればせながら今ごろになって読み、慟哭した。日航123便の誤撃墜とその隠蔽という非人間な国家犯罪が今も継続していると見るのが真っ当な判断である。これが無罪なら、およそ権力者は自白さえしなければ罰せられない暗黒世界だ。「大勲位がご存命のうちは」などという忖度の極みがまかり通ってはいないか。この事件をわかりやすくまとめた英語サイトを作ることに、一肌脱ごうと決心した。著者に手紙を書いた。)

310418 短歌タイムカプセル     (書肆侃侃房、平成30年刊)   東直子・佐藤弓生・千葉 聡 編著
(現代短歌の豊穣な多様性におどろいた。ここを出発点にして遠出を重ねたい、手ごろなアンソロジー。)

310412 日本史のツボ    (文春新書、平成30年刊)   本郷和人 著
(律令にもとづく「公地公民制」は広く実施されたわけではないが、国衙が土地没収できる根拠をつくり、これが皇族・貴族への口利き依頼(=寄進)を生み「職(しき)の体系」をかたちづくった。勝者がいないと言われる応仁の乱だが、細川家が管領の座を独占し続けられたわけで、軍事目的を達成したのは東軍なりと。梅毒が日本に入ってきたのは戦国時代だって。)

310408 承久の乱 日本史のターニングポイント    (文春新書、平成31年刊)   本郷和人 著
(武士のありかたについて高橋昌明著『武士の日本史』へのアンチテーゼが随所に出てくる。本郷さんのほうが正しそうだ。雑兵を「馬で踏み殺す」戦い方があったとは。北条時政、そして義時が、競合者を次々に陥れて実権を確立するさまに驚く。視点の設定を工夫すれば大河ドラマの傑作ができそうなものだが。院政の成立が、荘園寄進を集中させることによる経済力の確立にあったことも、なるほどだ。|それにしても、後鳥羽上皇の敗北が皇室のありかたの大きなターニングポイントだった。)

310406 利己主義という気概 エゴイズムを積極的に肯定する    (ビジネス社、平成20年刊)   Ayn Rand 著、藤森かよこ 訳
(理性と道徳に裏打ちされた「利己」とは、人間がもっとも真剣に善の実現を目指す行為。「利他」とは、人間からその真剣さを奪い、権力者の思惑に従わしめようという概念だと看破する。)

310402 日本美術応援団 今度は日本美術全集だ    (小学館、平成28年刊)   山下裕二・井浦 新 著
(「山下裕二選 日本美術・極私的50」で赤瀬川原平さんを ≪戦後の前衛美術シーンにおけるもっとも重要な作家≫ と評価する。知識に邪魔されることなく、知識ゼロでものと直接対峙する姿勢。ふつうは見過ごすようなものに面白さを見いだす姿。そういう赤瀬川さんを見て山下さん自身も、評価されているものの後追いではなく、誰も知らない作家を見いだすことこそ大切だと思いはじめたという。だから赤瀬川さんほどの恩人はいないのだと。|副島種臣の「積翠堂」の書や、牧島如鳩(にょきゅう)「魚藍観音像」|「源氏物語絵巻」に関連し山口晃さんが、引目鉤鼻は ≪お面と一緒で顔に表情をつけないと見ているほうはどうにでも表情を読み取れるという利点がある≫ とは、なるほど。)

310327 日本美術応援団 オトナの社会科見学    (中央公論新社、平成15年刊)   赤瀬川原平・山下裕二 著
(まさにオトナの世界。聖徳記念絵画館の巻、ほほぉと。)

310326 武士の日本史    (岩波新書、平成30年刊)   高橋昌明 著
(武士の起源や、戦国時代の合戦状況などが、江戸後期から明治にかけての著作で書き換えられてきたさまに驚く。人間はどう動くだろうかという極々の常識に照らして、なかなか納得の書。)

310324 見た目が若いと長生きする カラダ管理の新常識! 15のルール   (筑摩書房、平成22年刊)   川田浩志 著
(酒、地中海風食生活、適度の運動。)

310324 水源    (ビジネス社、平成16年刊)   Ayn Rand 著、藤森かよこ 訳
(gym の受講者からの紹介でこの最良の名著を読みだした。原作版も取り寄せ中。真の自己本位こそが世界を堕落から免れさせる支えとなる。|≪悪魔はひとつの大きな存在ではない。下卑た、ちっぽけな存在がいっぱい集まったものだ。≫≪自分がほんとうにしたいことをするためには、最大の勇気が必要となる。≫≪幸福というのは、自給自足、自己完結的。≫≪自我の反対語は陳腐さ。≫≪文明とは、個人の人間を、他の人間から解放する過程なのです。≫)

310319 江戸東京の明治維新    (岩波新書、平成30年刊)   横山百合子 著
(第四章 遊廓の明治維新、第五章 屠場をめぐる人びと が読ませる。遊女の位置づけの変遷、弾左衛門から木村荘平に至ることども。慶応3年に江戸市中で悪質なテロを引き起こした薩摩藩士らは西郷隆盛の密命によったと。きれいに繕われた隆盛神話は前から嫌いだが、隆盛への嫌悪が増した。)

310312 逆欠如の日本生活文化 日本にあるものは世界にあるか   (思文閣出版、平成17年刊)   園田英弘 編著
(井上章一さんの漁色論がおもしろい。女郎にあらざる藝者が、ほんらい同衾する人でないがゆえに、これを落とすことが漁色の愉しみとなり、やがてそれがダンスホールのダンサー、カフエの女給、ナイトクラブのホステスへと対象を変遷させ、その過程で藝者はほんらいの、売春とは無縁の存在に戻ったというわけ。|社会学部の卒論の模範集としても読める本。)

310308 アメリカ  (河出新書、平成30年刊)   橋爪大三郎・大澤真幸(まさち) 対談
(キリスト教諸派比較の視点から米国の「小さな政府」志向の理由を論じた第1部は面白い。カルヴァン派がピュアな形で成長し、米国なりの新興宗派を形成し、それが各国からの移民をまとめる拠り所にもなったと。しかしプラグマティズム論の第2部は空中戦で意味不明だし、日本の戦後史に敷衍した第3部に至っては読むに堪えない。比較宗教論は得意なのだろうが、専門を離れるとただの知ったかぶり文化人。失望とともに書を閉じた。)

310221 下町ロケット ゴースト  (小学館、平成30年刊)   池井戸 潤 著
(テレビ版が描き込みをどう工夫したか、うなづきつつ読了。)

310217 目からウロコ 人騒がせな名画たち  (マガジンハウス、平成30年刊)   木村泰司 著
(常識を突き抜け、後をひく絵。だから今日まで注目を集め続ける。)

310207 ポルトガル語基礎1500語  (大学書林、昭和38年刊)   浜口乃二雄 編著
(基礎1500語シリーズをはじめて読了した。やればできる。)

310207 げんきな日本論   (講談社現代新書、平成28年刊)   橋爪大三郎・大澤真幸(まさち) 対談
(社会学の切り口で見る日本史。こんな本を待っていた。談論のなかで仮説を出し論じ合うので、学術的ステートメントとして引用するには向かない、という意味で、高踏酒席に隣席する感。機能集団としての「イエ」論や、徳川期の佛教・儒学・国学の位置づけ、支配者としての「武士」は儒学が想定していないものであること、などなど秀逸。日米和親条約について、とにかく「日本が独立国である」ことを大国が国際的に宣言し、露・英・仏・独などによる植民地化はダメよと意思表示したものだと積極評価。そっか! ただ、159頁に≪ひらがなが表音文字であるがため、この文字体系ができると音韻変化がストップした≫という仮説は、いただけないね。門外人が言語を論じると、こういうヘマもする。)

310204 世界の言語シリーズ11 ポルトガル語   (大阪大学出版会、平成28年刊)   平田惠津子・鳥居玲奈・Roge‘rio Akiti Dezem 共著
(全部は読み切れてないが、言語のようすは分った。スペイン語より動詞の不規則活用は少ない。時制のシステムは古来の姿に近いようだ。)

310204 ひらがな日本美術史3    (新潮社、平成11年刊)   橋本 治 著
(織物の模様は、人間がときどき違ったことをして模様でも織り出さないと、織ることに飽きるから…って。南蛮屏風の原画は小さなモノクロ銅版画で、それを岩絵具で大画面のカラー版に起こしたのが日本の職人だと。風雅の典型とおもった「誰が袖屏風」が遊女との逢瀬の思い出をデザイン屏風の伝統(月次絵(つきなみえ)→扇面貼交屏風→)に託したものだったとは。)

310129 ひらがな日本美術史4    (新潮社、平成14年刊)   橋本 治 著
(宗達の雷神を「イーヒッヒッと笑いながらスカイサーフィンをしている」と喝破し、光琳によるオマージュをただのプリミティヴ・アートと言ってのける。|≪連歌とか俳諧という文学は次々と付け加えられていく“流れ”を楽しむもの。日本の美意識には「静止しない」が前提としてある。桂離宮も同じなのである。≫|木喰(もくじき)の像は、彼自身の願望が過剰な形で入り込んでいるからなんだか不気味。なるほど。|菱川師宣が元祖なのは商品として成立する版画の版下絵をはじめて描いたからだが、その肉筆画は近世初期風俗画であって、絵として新しいのは懐月堂安度のほう。なるほど。浮世絵成立の歴史が本書でよくわかった。)

310127 ポルトガル語のしくみ   (白水社、平成27年刊)   市之瀬 敦 著
(ブラジル大使館の勤務の口に応募をキッカケに勉強してみたら、スペイン語の変奏曲みたいなもので、数日で中級レベルのものが読めるようになった。まだ辞書も買ってないのにね。)

310122 ビザンツ帝国 生存戦略の一千年   (白水社、平成30年刊)   Jonathan Harris 著、井上浩一 訳
(これまでの自分の世界史は、古代ギリシア以降のギリシアが存在せず、現在のトルコ領域もオスマントルコ成立まで空白だったが、なんとビザンツ帝国がギリシア+現トルコ+周辺領域を千年にわたりまとめあげていたとは! 必読の名著。結語が味わい深い:≪ビザンツ帝国の最大の遺産は、もっとも厳しい逆境にあっても他者をなじませ統合する能力にこそ社会の強さがあるという教訓である。≫ アラブ人については ≪イスラームを受容したことでアラブ人が好戦的になったわけではない。アラブ人はずっと戦争で生計を立てていたし、イスラームもそれを変えなかっただけである。≫ ブルガリアやロシアの帰依や十字軍の実態も、ビザンツ帝国からの視点で見ることで、よく理解できた。)

310117 50歳を超えても脳が若返る生き方   (講談社+α新書、平成30年刊)   加藤俊徳 著
(「適度な欲求・欲望をもち、その実現のために行動する」「夢を抱いて、それに適応する能力をつくりだす」「100歳まで生きることを前提に目標を持つ」「実年齢より20歳若いと思い込んで生きる」は合格なのだが、「感情的にならない」「自分とちがう価値観も受け入れる」「万遍なく運動する」あたりはぼくの不合格ポイント。感謝はひとの脳の感受性を向上させ、ヒラメキが出やすくする。嫌な人とはできるだけ交流せず、嫌なこともしないという生き方はマルだそうだ。眼球運動も重要ということで、さっそくアート作品をみるとき眼球でなめまわすように見ることにした。)

310115 脳が老いない世界一シンプルな方法   (ダイヤモンド社、平成30年刊)  久賀谷亮(あきら)
(基本は Mindfulness のすすめ。「世界一シンプル」は編集者がひねり出したウソだね。|若者の血を老年者に輸血する、吸血鬼そのままの若返り法もあるらしくて、著者も衝撃をうけたと。parabiosis だって。|加齢にともない既存の価値観から脱却した高みを獲得した状態は gerotranscendence. 限られたひととの深いつながりをより重視しつつ、利己よりも利他の精神。)

310111 フランス語語彙をひろげる7つのテクニック   (白水社、平成24年刊)   田中幸子・Isabelle Folte^te 共著
(語形成の解説書かと思ったら、総合的学習書だった。口語のフランス語では否定文で まま ne を省き pas だけで済ませるようだ。主語の tu を je なみに主動詞とアンシェヌマンさせ tu as を t'as のように言うのもビックリ。)

310107 フランス語の進化と構造   (白水社、昭和51年刊)   Walther von Wartburg 著、田島宏ほか共訳
(≪フランス語の文形成の基礎になっている単位は語ではなくリズム段落 groupe rythmique である。たとえば la premie`re offre のようなひとつづきの語のなかには1つの強さアクセントしかない。≫ そして母音は長音化せず、そのぶん母音の音色が極めて多様で16もある。≪母音体系の異常な多様性≫ とまで言い切る。ドイツ語のようにフレーズを波動的に強調することができない平坦きわまりない言語なので、文のいずれかの部分を強めるには強調構文に頼らざるをえない。… この辺がなるほどフランス語の特徴だ。)

310105 ペンギンの島   (白水 u ブックス、平成30年刊、原著1908年、和訳 昭和45年刊を復刊)   Anatole France 著、近藤矩子(のりこ)
(フランスの歴史書や中世の読み物の風格をパロッたさまを楽しめるネイティブにとっては、痛快にちがいない。ストーリーではなく、個々の描写のさまを愉快がるべき作品。『カンディード』に列なるものだ。)

310102 ポーランド語基礎1500語   (大学書林、昭和57年刊)   小原雅俊 編
(各見出し語の変化形の出し方が絶品。名詞なら単数生格・前置格+複数主格・生格; 動詞なら一人称単数現在・二人称単数現在+命令形、かつ訳語欄に完了体動詞も同様に示す。末尾の文法便覧も簡潔で使いやすい。必要にして十分とはこの本のこと。あまりにいいので、今後の自分用に1冊購入した。)

310101 訣別の森   (講談社、平成20年刊)   末浦広海 著
(2つのストーリーラインが最後にぶつかりあう王道の手法だが、裏ストーリーが貧弱すぎるため前半が分かりづらい。最後の北海道犬と狼の子らの姿がひたむきに神々しいまでに美しい。)


<積ん読(つんどく)ほか、買って読了>

令020325 The Catcher in the Rye     (Little, Brown and Company, Boston)   J.D. Salinger 著
(英語上達のおかげで、読み進むのにつれキャラがビビッドに動いた。やたら粋がり、みょうにキメたがる、アンバランスな年代の内面をみごとに切り取っている。)

令020304 人之彼岸     (北京・中信出版集団、平成29年刊)   郝景芳 著
(はじめて中国SF小説を完読。インパクトが長く残る作品だ。)

令020308 歴史が教えてくれる働き方・生き方    (明日香出版社、令和2年刊)   本郷貴裕 著
(胸に手を当てたくなるくだりも多々。読後、斉藤哲君に進呈した。)

令020303 The Seven Good Years     (Granta Publications, London 平成27年刊)   Etgar Keret 著、Sondra Silverston ほか 英訳
(Memoir のジャンルにして、ここまで hilarious. 彼の世界の住人になれば、少々の奇異や偏屈にはヘコたれなくなるね。)

令二0126 銃・病原菌・鉄 [下] 1万3千年にわたる人類史の謎    (草思社、平成12年刊)   Jared Diamond 著、倉骨 彰 訳
(冒頭に文字の誕生のことが書いてある章があるのに惹かれて下巻だけ買って、いままで積ん読だった。現在の言語分布をもとにして歴史をさかのぼって見せるプロセスが刺激的。本書をかりに高校で読んだら、やはり言語学者になっていたかもしれない。ユーラシア大陸どうよう、アフリカ大陸でも壮大な民族の興亡が起きていたとは。)

令元1119 New Penguin Parallel Text Short Stories in Chinese 中国短篇小説集     (Penguin Books 平成25年刊)   John Balcom 編・英訳
(全8篇はそれぞれにダークで、ふしぎなユーモアもあり、読む価値あり。日本語や英語でこの内容の文藝作品は想像しにくい。中国文に “一件” を “意見” と書くようなワープロ誤変換が多数残っているのが残念。)

令元1030 ヴェトナム語の世界 ヴェトナム語基本文典    (大学書林、平成12年刊)   冨田健次 著
(久々にヴェトナム語をリフレッシュできて、コンプレックスが消えた。声調のことはわずか 3頁。単語内の各音節の声調が前後の影響を受けてどう変化するのか、声調変化のさわりだけでも知りたかった。興味が専門的すぎだろうか。中国語とフランス語からの語彙流入のことにも、もっと頁をさいて文化論を語ってくればいいのに。)

令元1014 Walking Through Time   (Windswept House Publishers, ME, U.S.A. 平成10年刊)   Lauren Walden Rabb 著
(英語でさらりと読み通したはじめての小説だ。てっきり『君の名は。』のような時空ワープの SF 作品かと思ったら、19世紀末の画家の妻の過去をたどる女性作家の再生の日々をごくまっとうに描いた、美術専門家によるセミ・フィクションだった。)

令元1008 The Story of England   (Phaiton Press, London 平成4年刊)   Christopher Hibbert 著
(超長期の積ん読本にようやく手がついた。描かれるのはサッチャー首相がメイジャー首相に代わるまで。血と暴力の歳月から近現代への飛翔が、王権と国民の関係性の変化によるものであることが如実に示される。個々の人物の人となりが、豊富な形容詞の積み重ねで絵画化される。第2次世界大戦についてはほとんど書かれていない。めりはりがみごと。)

令元0925 Seven Days in the Art World    (Granta Publications, London 平成21年刊)   Sarah Thornton 著
(てっきり小説と思ったまま積ん読だったが、執筆当時の美術界最先端のルポだった。言及されている現代アートの士たちを丹念にネットで追ってみたいが。)

令元0908 The Art of Understanding Art: a New Perspective   (Profile Books, London 平成27年刊)   Hugh Moss 著、Peter Stuart 挿画
(アートは consciousness を別次元にまで transcend させてくれるものなのであり、西洋では intelect が暴君然として介在してきたが、中国の書画は西洋のはるか以前にアートのあるべき高みに達していたと。論の筋立てに中国という座標軸を入れたところが新鮮。じっさいにアート作品を買い始める前に、自ら空想上のコレクションを綿密に組み立てて練習するのがよいと説くが、まさか著者本人はそれを実践してはいないだろう。)

令元0905 3パターンで決める日常タイ語会話ネイティブ表現   (語研、平成26年刊)   荘司和子(しょうじ・わこ)
(タイ出張の往路でかなり読み、復路でちょっと読み、最後は通勤電車で読了。もう2巡するつもり。)

令元0810 Skin in the Game Hidden Asymmetries in Daily Life    (Penguin Random House, New York 平成31年刊)   Nassim Nicholas Taleb 著
(当事者意識の欠如した評論家知識人がいかに世を誤り導くか。鮮烈な諷説と遊び心は、英語原文でないと味わえまい。もう1ラウンド読むつもり。)

令元0805 明解ポーランド語文法     (白水社、平成28年刊)   石井哲士朗 著
(買ったときには随分敷居が高かった。読了までよく漕ぎつけた。そのうちもう1ラウンドするつもり。)

令元0627 The Culture Map: Decoding how people think, lead, and get things done across cultures    (PublicAffairs 平成26年刊)   Erin Meyer 著
(いまにして思えば、タイ人に対して誤りをあれこれせっかちに指摘したぼくのやり方は間違いだったなぁと、本書を読んで反省することしきり。同じ白人でも文化はこうまで違うのかと、驚かされた。こんな流儀で日中韓台泰を比べる本があると面白いね。)

令元0617 Fluent in 3 Months: Tips and techniques to help you learn any language   (HarperCollins Publishers  平成26年刊)   Benny Lewis 著
(どの言語であれ、自分が発言することになりそうな話題10題をネイティブチェック済の文章ですらすら言えるように準備しておく、というのは fluent を示すためのいいコツだ。フランス語やポーランド語でぜひ実践したいと思いつつ、次の1歩が難しいけれど。|いろいろ有用なリンクの紹介もあるので、今後も利用するつもり。)

310429 学校教育がガラッと変わるから、親が知るべき今から始める子どもの学び     (風鳴舎、平成30年刊)  山口たく 著
(「正解主義」の呪縛からのがれることが要。本の後半が急に内容が薄くなる。この部分は1冊分にするためにライターが書き膨らませたのではないかな。|こういう教育啓蒙書を中上層部の高校生向けに書いてみたくなった。)

310401 日本文明試論 来るべき世界基準のアートを生む思想    (幻冬舎ルネッサンス、平成26年刊)   大島雄太 著
(竹中工務店勤務の、単なる勉強家のサラリーマンが書いた「美術+建築」の様式論。建築家 磯崎新 氏のポストモダンのシニシズムを撃つべく、日本の文化力の根底を論考。)

310328 残念な英語 間違うのは日本人だけじゃない    (光文社新書、平成30年刊)   David Thayne 著
(類書は多いが、日本人以外の非ネイティブ(ハンガリー人や中国人など)の珍英語を扱った第5章では何度も噴き出した。street walking が、街の女の歩きを意味するとは。たしかに streetwalker は prostitute のことだね。)

310320 表現のための実践ロイヤル英文法 ピーターセンの英文ライティング特別講義40    (旺文社、平成30年刊)   Mark Petersen 著
(英作文添削に実際に役立つ。Because の従属節だけで文を完結させる受講生には137頁を熟読してもらうのがいちばん。)

310309 ポーランド語基本文1000    (大学書林、昭和55年刊)   直野敦・Krzysztof Strebeyko 著
(1日に見開き2頁ずつ進み、ついに音読を了える。あと2巡して、ポーランド語を肉にしたい。)

310227 Expert Secrets: The Underground Playbook to Find Your Message, Build a Tribe, and Change the World    (Morgan James Publishing, New York 平成29年刊)   Russel Brunson 著
(効果的なウェビナーを作って集客し、高価な研修教材を売りつけて百万ドル単位で稼ぎましょうと。想定収益のケタ数が3つ、いや4つ多いんだよね。米国って、どんな国なの?)

310121 アートの入り口 美しいもの、世界の歩き方[アメリカ編]    (太田出版、平成28年刊)   河内タカ 著
(ぼくと同世代のひとで、高卒後、平成23年まで米国に本拠を移したひと。自然体。表紙にエドワード・ホッパーを使っていることからして、ぼくにもピタッ。米国の写真家列伝は、新鮮なテーマだった。)



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